レポート2018.12.25

【スマート林業】ドローンを使った列状間伐での架線における必要な現場の仕立て

スマート林業ドローンで架線
スマート林業ドローンで架線

【目次:本レポートの内容】
  • 1.列状間伐を抜け350m先の先柱へ
  • 2.今回のミッション
  • 3.難はあるがミッション達成
  • 4.リードケーブル受け取りイメージ
  • 5.ドローン架線に適した現場への仕立て
  • 6.道具としてのドローン
  • 7.必要なコスト
  • 8.自治体、事業体の方へ



1.列状間伐を抜け350m先の先柱へ

離陸するドローン
離陸するドローン


今回の検証は距離ではなく環境に重点を置いた検証です。皆伐地でリードケーブルを運ぶなら500mくらいまではそれほど難しくないミッションになりますが、先柱が列状間伐を抜けた先にあるとなると、難易度はグッと上がります。通常の架線の現場であれば普通の環境ではありますが、そこへドローンを投入することが現実的にできるのでしょうか。できるにしても、できないにしても課題を洗い出します。

2.今回のミッション

成功条件;離陸から5分以内に350m先のスタッフへリードケーブルを渡す
場所;岐阜県揖斐川町
地形;V字谷
距離;350m(射雕)
リードケーブル;バインダー紐
現場条件;通常の架線と同条件の列状間伐(後に後述します)
運搬方法;ドローンとそれに取り付けた安全投下装置を使い先柱へのスタッフに渡す
使用機材1;DJI INSPRE1(ドローン)
使用機材2;飛来君1号機(安全投下装置)
ドローン:DJI社インスパイア1  投下装置:飛来君1号機(オレンジの装置)
ドローン:DJI社インスパイア1  投下装置:飛来君1号機(オレンジの装置)


3.難はあるがミッション達成


結論から言えばトラブルなしでリードケーブルを運ぶことができました。
離陸側の列状間伐を抜け、谷を越え、先柱へ4分半程度かかりドローンで運ぶことができました。

今回の実証課題は先柱側でへ安全かつ、段取りよくアプローチできるか、これにつきます。当初、いただいた資料と地形情報からは「やや困難」という判定をしました。「間伐幅が2m程度」との情報で、350m先にある2mの幅にドローンをアプローチさせるのはかなり高度な技術が必要なのと、仮に実現できたとしても熟練した操縦が必要になり、現場ツールとして汎用性が薄くなり、「スマート林業」と言えなくなるからです。
実際は間伐幅が4m近くあったこと、先柱が急峻な地形であり、列状間伐に上からのアプローチが可能でした。斜面勾配として、35〜40度くらい。
左の黄色丸が元柱。右の赤丸が先柱
左の黄色丸が元柱。右の赤丸が先柱


4.リードケーブル受け取りイメージ

トランシーバーで「進んで、進んで」「降りて、降りて」と連絡を取り合いながら、ドローンから垂れる受け取りようリングを掴み、確認後、遠隔でリリース、という流れです。
先柱で受け取り用リングをつかみ
先柱で受け取り用リングをつかみ
掴んだのを確認してリリース
掴んだのを確認してリリース




5.ドローン架線に適した現場への仕立て


成功はしましたがいくつか改善が必要な点があります。これらを改善することでドローンを使ってのリードケーブル運搬は格段に容易になります

1.離陸を阻害する立木

元柱側から撮影。赤丸の枝が飛行経路を阻害
元柱側から撮影。赤丸の枝が飛行経路を阻害

写真は離陸側から見た光景ですが、ドローンの正面のちょうどいいところに枝が広がっています。この場合、上から抜けるか、下から抜けるか悩むところですが、今回は下から抜けました。

ドローン単独で抜ける場合には問題ないのですが、リードケーブルと架線しながらとなると少し難易度が上がる、つまり不慣れな操縦者のミスの原因になり得ます。できればこうした立木は伐倒してあると安心して飛ばすことができます。

2.先柱周りの空間

先柱まわり
先柱まわり

次に先柱側ですが、今回は急峻な斜面だったので、上からの降下によるアプローチとなりましたが、ドローンが降下するスペースとしては狭いです。GPSによる安定したホバリングが可能とはいえ、感度不足によるふらつきは発生し、今回もヒヤッとするシーンがありました。降下後に再上昇しますが、枝葉の広がりが分かりづらく、離陸側からの目視と先柱側からのトランシーバー情報を頼りにするしかりません。
直径で6m程度の空間は必要になりそうです。

環境さえ整えれば、一般的なドローン技能でも安心して操縦できるということが確認できました。

6.道具としてのドローン

現場にはタワーヤーダが待機
現場にはタワーヤーダが待機

「ドローンは道具」です。なんでもできる魔法の航空機ではありません。
道具であれば、どんなタイミングで、どう使うかを理解して使っています。例えばチェーンソーだけで収納家具はできません。ノコギリやサンダーやドリルなども駆使して、木材から形を変えていきます。「そんなこと当たり前だ」と思いますが、ドローンはメディアでの報道が過熱気味でなんでもできるようなイメージが先行しがちです。実際、今回は成功しましたが、ドローンの機種や現場環境、リードケーブル素材によっては実現が不可能になります。林業に携わる方は多様な機械を使い分けて現場に望まれるので、ご理解いただけると思います。弊社としても引き続き、林業での活用についての情報発信をしてまいります。
現場で「クマロープ」と呼ばれていた線材は重くて運べず現場で「クマロープ」と呼ばれていた線材は重くて運べず
現場で「クマロープ」と呼ばれていた線材は重くて運べず


7.必要なコスト

ドローン本体 30~50万円(DJI社
投下装置 10万円(飛来君1号機)
人材育成費 10万円~

手軽さを考えるとPhnatom4やMavicあたりが撮影も行えるのでおすすめですね。
ただ、インスパイアも良質な中古機体の価格が下がっていますので、そちらもご検討ください。

参加機関

岐阜県森林文化アカデミー
揖斐森林組合

8.自治体、事業体の方へ


弊社では林業へのドローン活用に向けた支援として、活用のためのセミナー・ワークショップの開催、現場指導、機材選定等も行うことができますので、お気軽にご相談ください。

左側が弊社代表
左側が弊社代表