レポート2019.10.09

【レポート】そのドローン、測れてますか? #スマート農業

空を見上げる農家
雲ひとつない空を見上げる農家さん
7月から岐阜県中津川市で始めたスマート農業の実証事業ですが、3ヶ月の期間を終えましたので、現場からのドローン技術側の観点でレポートをお届けしたいと思います。目標とする精度から飛行プログラムを生成し、解析を行い、実際の育成具合との相関をみるというフローのだったので、弊社としては「ドローンを飛ばして撮影データを取得する」だけだったので、それほど技術的な難しさはなく、7箇所の測定は半日で終わる見込みでした。

1.飛ばないドローン

精密農業 岐阜 スマート農業parrot
初日は調子の悪かったparrot社Blue glass

 第1回目となる7月はPrrot社ブルーグラスを使いました。マルチスペクトラムカメラ「Sequoia」を内蔵しており、Pix4Dマッパーを使い飛行する方法です。気温が上がってくるとバッテリーやデバイスへの影響が懸念されるので、早めのスタートで現地6時集合でやる気十分で現場へ向かいました。関係者の方も続々と集まり、みなさんの期待も高まってきます。
 事前に生成しておいたプログラムを読み込み、「いざ、データをアップロード」。

ところが、「アップロードエラー」の表示が。機体やアプリを再起動するも、全く音沙汰なし。何度かやり直すと、飛行は実現できましたが、午前中に飛行できたのは2箇所で、改めて翌日の計測となりました。
原因としては、アプリ側の設定ミスでした。普段、濃尾平野の低い(G.H.0~30m)ところでしか計測をしておらず、中津川(G.H.300m以上)という標高の高い空域で飛ばすには制限を解除する必要がありました。こういうことは説明書には書いてありません、というよりドローンや関連アプリには取り扱い説明書が無いことがほとんどのため、使いながら使い方を理解していくケースが多いです。翌日に無事にフライトを終えました。


2.撮影しないカメラ

DJI社インスパイアにSequoiaを搭載した様子
DJI社インスパイアにSequoiaを搭載した様子

2回目となる8月は、トラブルが発生した時に原因を追求しやすくするため、カメラ一体型のParrot社を諦め、DJI社のドローンにセコイアを独立して積む方法を取りました。これによりドローンが飛ばない、というトラブルは発現率10%以下まで抑えました。(時折、フライトMissionのアップロードがうまく行かないことはありました)
ですが、問題はカメラでした。セコイアカメラはインターバル撮影をするはずなのですが、何回かシャッターを切ると電源ダウンが発生するトラブルが頻発。これにより、ドローンが飛行できていても、撮影ができていないケースが発生しました。この日は気温が午前中から30度を超え、カメラもかなり加熱していました。現場で冷やしながら、冷めては飛ばしを繰り返しを繰り返してなんとか撮影を終えました。
濡れたタオルでカメラを冷やす様子
濡れたタオルでカメラを冷やす様子


3.記録されない飛行データ

本当ならこの飛んだ軌跡が写真にも残されているはず


さて、撮影を終えて解析にかけると、「本来あるはずの位置情報が写真データに付与されていない」という、計測業務で言えば頭が真っ白になるような自体です。位置情報がなければ解析がかなり困難になるからです。調べてみると、全7箇所のうち、6箇所で位置情報の欠損という大惨事でした。
なんとか、位置情報を付与せねばと考えました。通常であればここで、飛行ルートを生成するMissionplannerからログを吸い出して、、、と行くのですが、この時に使ったiPadが業務直後に破損してしまいデータが見られない状態でした。さてどうするか、と困っていたのですが、セコイアを搭載していたドローン側のログがあることに気づき、こちらからログを抜き出すことに成功しました。これを専用ソフトを使い写真全て(1000枚程度)に付与していき、なんとか解析できるデータとすることができました。
「GPS情報が無いから無理」と拒否された画面
「GPS情報が無いから無理」と拒否された画面



4.原因はケーブル?デバイス?


撮影しない、位置情報が付与されないことについては、おそらく、カメラへの電力供給、接続ケーブルとの相性が原因だったと推測されます。その周辺を中心に対策を行い、9月の計測ではトラブルが全く出ませんでした。カメラに対しての熱対策も施しましたが、カメラの背面温度で5度ほど下がる効果はありましたが、こちらの効果は限定的だったように考えています。
左がカメラ、右がGPSアンテナ兼センサー


5.3回目にしてとうとうスマート

3回目はトラブル無しでゴキゲンに飛んだインスパイア
3回目はトラブル無しでゴキゲンに飛んだインスパイア

1回目、2回目とトラブルが続きましたが、3回目は本来のスマートな計測ができました。全7箇所をおよそ2.5時間で計測しました。全て移動したことを考慮すると、まずまずの所要時間だと考えています。実際に飛んでいる時間は5分~7分程度で、前後の準備片付けを含めて15分くらい現場にいます。大きくてもほ場が繋がっていれば、拠点を動かす必要もないので、さらに短時間で可能です。

6.一年後には解決?


弊社としても岐阜県からお声がけいただき、試行錯誤しながらの取り組みでした。3回目はノントラブルでしたが、1回目、2回目はそれぞれ異なるトラブルとなりました。結果としては解決できましたが、「スマート農業」となるには機器側の安定稼働やノウハウの蓄積等、課題も見えてきました。本来であれば、煩わしい操作を無くし誰でも使える、ユーザーフレンドリーかつユニバーサルデザインなアプリや機器となって普及していくのが望ましいと感じてます。ドローン業界のこれまでを見ると、来年か再来年には解決しているかもしれません。
冷却コアが取り付けられたカメラ
カメラを冷やす冷却コア(CPUクーラ流用)で工夫しなくても良い時代が来年には来そうです




本事業は「苗木スマート農業協議会」「岐阜県」「岐阜大学」主導のもと実施されました。
関係者皆様のご協力、ご指導に深く感謝します。